学校ブログ

令和4年度 第三学期始業式 目標を決めることの大切さ

 風が少し強かったけれど、よく晴れた一日になりました。

 本日1月10日(火)より、3学期がスタートしました。子どもたちの生きる力をはぐくため、職員一同今学期もがんばっていきたいと思います。

 学期はじめは、学習・運動・生活などに係る新学期の目標を決めます。その目標が形骸化しないよう、子どもたちにとって価値あるものとなるよう声掛けをすることが大切です。

 そこで、始業式の校長講話で、「足無し禅師」と呼ばれながら多くの人の尊敬を集めた小澤 道雄禅師について、次のようなお話をしました。

 

 小澤禅師は2本の足のどちらもひざから下がなかったので、「足無し禅師」と呼ばれていました。禅師というのは、立派なお坊様を尊敬して呼ぶ呼び方です。小澤禅師は20歳のころ戦争に行っていましたが、敗戦後、極寒の地シベリアで働かされました。ある日、逃げようとした仲間を止めようとして、見張りの兵隊に撃たれてしまいました。傷を治すために、遠く離れた中国の病院に運ばれましたが、マイナス50度という極寒の中、終戦時の夏の軍服のまま、屋根のない貨車で三日も運ばれたのです。仲間の半数は凍死し、小澤禅師も両足が重度の凍傷に罹りました。麻酔も道具もない中での両足切断の手術は、想像を絶する痛みでした。術後も痛みと苦しみが、一か月以上続きました。

 その後命がけで日本の家族のもとに帰り、家族と再会できましたが、不自由な体では家族のために働くこともできませんでした。小澤禅師は絶望し、何度も死んでしまいたいと思いました。

 そんな中、突然、ある考えがひらめきました。「苦しいのは、比べるからだ。」それはこのような思いでした。

「自分は27年前、五体満足で生まれた。その時と比べるから苦しいのだ。27年前に生まれたことをやめにして、今日、両足がないまま生まれたことにすれば、なんの苦しみもない。そうだ。『本日ただいま誕生』したのだ。」

 現実に、リハビリは困難を極めました。義足を付けるとき、足の切断面がひどく痛みました。その都度、小澤禅師は激痛に耐え、「本日、ただいま誕生!」と唱え続けました。そして、「自分は、仏様に生かされている。そのご恩返しをしなくてはいけない。そのために、一生をかけて、次の目標を守ろう。」と心に決めました。

一つ、笑顔を絶やさないこと。一つ、人の話を素直に聴くこと。一つ、誰にでも親切にすること。一つ、絶対に怒らないこと。

 こうして小澤禅師は、信じられないことに、不自由な足で日本中を旅してまわり、托鉢に努めました。お寺や不幸な人のために、多くの寄付を集めたのです。そして、悩みを抱える人の話を温かく受け入れ、幸せへと導きました。いつしか周囲は彼を心から尊敬するようになり、「足無し禅師」として多くの人が慕ったのです。彼はその生涯を「本日ただいま誕生」という本にまとめ、その感動的な内容は、映画やドラマ、演劇となり、多くの人を感動させました。そして、57歳で幸せな生涯を閉じたのです。

 小澤禅師がもし「なぜ戦争などに行かなければならなかったのだ」「なぜ自分が両足を失うはめになったのか」と、人を世を恨み続けたのなら、決してこのような境地には至らなかったでしょう。生涯をとおして四つの目標を守り、多くの人を救うことで恩返しをしたことで、小澤禅師は幸せな人生を送ることができたのです。

 このあと、代表児童が立派な作文を読み上げてくれました。「三学期は、たくさんの人と話したい。今まであまり話したことがなかった人とも、自分から、話しかけてみたい。」

 素晴らしい内容でした。まさに目標とは、それでよいのです。目標を決めるのは、自分の幸せに近付くためです。そして、目標は小さくてよいのです。「忘れ物をしない」とか、「2分前に着席する」とか、ちょっとがんばれば達成できるものでよいのです。「夢は大きく、目標は小さく」です。その小さな目標を達成したとき、人は大きく成長するのですから。

 三学期も、子どもたちが将来立派に自立できる力を身に付けるために、幸せに近付けるように、職員一同がんばってまいります。今学期も、よろしくお願いいたします。