日誌

第60回卒業証書授与式

令和2年3月23日、吉川市立東中学校第60回卒業証書授与式を挙行いたしました。新型コロナウィルスの影響で、保護者の皆様には、ご参列していただくことができず、大変申し訳なく思っております。せめてものお詫びではありませんが、会場内の様子を写真でお知らせしたいと思います。なお、写真の最後には、校長式辞も掲載しております。よろしくお願いします。

式辞
今、日本にそして世界に不安が広がっています。しかし、今年も4階の廊下の窓から見える江戸川の堤を、菜の花が黄色く染めています。何事もないかのように、いつも通りの春を吉川にもたらす、自然のゆるぎない強さが、皆さんに、物事を正しく考え、前に進めと後押しをしてくれています。
 卒業生のみなさん、覚えていますか。私が皆さんに出した「校長からの宿題」です。その三つ目は、「凛とした中学生とは、どのような中学生かを考える。」という宿題です。「凛」ということばの意味が分からなければ調べなさい。新入生165人にそれぞれ違った答えがあるかも知れません。その答えは3年後、卒業証書授与式での、あなた自身の姿で示しなさい。
3年前、皆さんを迎えた入学式で、私が与えた宿題です。今、卒業生の一人一人から提出された宿題の内容に「頼もしさ」「素直さ」そして「成長の証」を感じています。いよいよ卒業ですね。
4月の朝、駐車場から職員玄関に向かう階段の途中で、よく通るすがすがしい声で「おはようございます。」と、ほやほやの3年生が、部活動のランニング中にもかかわらず笑顔をつくって、あいさつをしてくれました。「最高学年への進級や、クラス替えへの期待や不安が入り混じっているんだろうな。」と思いながらも、とてもさわやかな印象として残っています。
卒業生の一人一人の人柄に触れることができたのは、入試面接も視野に入れた校長面接の機会でした。「以上で面接を終わります」と告げた後、その場ですぐに面接の反省会。「緊張したでしょ。緊張して頭が真っ白になって何も言葉が出なくたって、シドロモドロになったっていいんだよ。一生懸命やっている姿を面接官に見てもらえればいいんだよ。」と伝えると、緊張から解放され、いつもの笑顔に戻る3年生。「そうそう、その笑顔だよ。」と言葉を添えても「それができれば苦労しないよ。校長先生」とでも言いたげな表情が、私と、3年生一人一人との距離を縮めてくれました。
時に優しく、時に強く、声を掛け合い、相手を称え、団結して競いあう、自らが作った体育祭。清らかで重みのある歌声と仲間を信じた真剣味あふれる姿勢、そして、決して平坦ではなかったはずの完成に至るまでの練習の一瞬一瞬を思い、心が揺さぶられた合唱祭。卒業生の皆さん、あなた方は、まとまりを保ち、言葉には出さない姿勢や態度、文字通りその「後ろ姿」で下級生に道筋を示しました。
 これから、巣立つ卒業生に私の思いを伝えます。
ひとつ。
 「ご利用の場合は店員に一声おかけください」というお願いを、コンビニのトイレの入り口で見かけたことはありますか。利用したいと思っているとき、卒業生の皆さんは、このお願いを見てどうしてますか。何も言わずに利用しますか。躊躇して結局利用しませんか。伝え方はどうであれ一声かけますか。店内にたくさんのお客さんがいれば恥ずかしいという気持ちから躊躇する人も、全然気にならないという人もいるかも知れません。私には、どれも経験がありますから、一声かけることに勇気が必要であることはよくわかります。ただ、確かに言えることは、人と、特に親しい関係にない方とのコミュニケーションは、少なからず自らの心を動かすことにつながるということです。それを大切にしてもらいたいのです。私は、店内にお客さんがいなかったのでトイレの前で「トイレお借りします。」と、レジの店員さんに、聞こえるように声をかけました。「どうぞ、ありがとうございます。」と明るい声。お互いに姿は見えませんが、言葉のやり取りができ、おまけに「ありがとうございます。」とお礼を言われたことで、晴れやかな気持ちになりました。これが、15歳の皆さんに求められ、身に付けてほしいコミュニケーション能力の出発点です。人のため、地域のため、志を胸に活躍を期待されている、卒業生の皆さん、「これから出会うたくさんの人との、生きた言葉を通じた心の通い合い」を大切なものとして持ち続けなさい。
 もう一つ。
 学校だより「あじさい」の3月号では、「さて、3年生。2月が終わり3月になれば、ゆったりと過ごせる時期になります。卒業式まで間もないですが、先生や友達と中学校生活の思い出を語るひとときを満喫してほしいと心から思っています。」と締めくくりました。が、理由はどうであれ、卒業生にそのような時間を持たせてあげられなかったことが心残りです。3年間、東中で多くの人たちから支えられ、共に成長した皆さんです。仲間を信じ、それぞれの場所で蓄えた力を発揮しなさい。
 保護者の皆様、心身ともにたくましく成長した我が子の姿に、喜びもひとしおかと存じます。お子様の成長に合わせ、文字通り一喜一憂の3年間だったのではと、ご推察いたします。卒業生一人ひとりに手渡した卒業証書には、お子様の名前と共に、義務教育卒業を立派に導いた保護者の皆様の、温かい思いが添えられています。心よりお祝い申し上げます。
 結びになりますが、卒業生一人ひとりの活躍と幸せをお祈りするとともに、一万二百九名の同窓生の一員として、東中学校や地域を支えてほしいとの願いを込め、式辞といたします。
令和2年3月13日                
東中学校 校長 前田 稔